社会臨床雑誌第17巻第3号

社会臨床雑誌第17巻第3号
2010年1月31日発行

はじめに 日本社会臨床学会編集委員会 (1)
『社会臨床雑誌』の発売元を現代書館にお願いすることについて 日本社会臨床学会運営委員会 (2)

〈日本社会臨床学会第17回総会報告(2009年5月30〜31日 於奈良女子大学)・続〉
シンポジウムII 「優生学から新優生学へ」を検証する〜日米を行き交いながら
 午前 アメリカからの報告〜アメリカの優生思想の伝統と現在 秋葉總 (3)
 午後 パネル・ディスカッション 秋葉總・竹内章郎・福本英子・山下恒男 (15)

〈論文〉
「障害児・者問題試論」36年 篠原睦治 (36)
「差別禁止法」ということへの疑問への意見 桐原尚之 (50)
児童虐待対応における質向上のための一提案 佐藤剛 (54)
「脳」・「意識」・「自己」を考える 原田牧雄 (62)

〈「岡村達雄さんを偲ぶ会」シンポジウム〉
岡村さんの研究・社会活動を振り返る  (74)

〈「シリーズ『社会臨床の視界』を読む」及び「『社会臨床の視界』読解の試み」に応えて〉
書評を読む 岡山輝明 (96)
「社会臨床の視界」第2巻『精神科医療 治療・生活・社会』に対する書評を読む 大賀達雄 (98)
第2巻『精神科医療 治療・生活・社会』への意見・施策をめぐって 三輪寿二 (103)
「せめぎ合う」ということ 高石伸人 (106)
三人の方の、第3巻『「新優生学」時代の生老病死』の「書評的論評」への一執筆者(一話し手)からの或る種の「応答」 竹内章郎 (109)
心理的権力と反精神医学的視点 中島浩籌 (114)
書評に答えて 森真一 (117)
「『社会臨床の視界』読解の試み」を読んで 川英友 (122)

〈ここの場所から〉
観念と現実の間(2) 佐藤剛 (128)

編集後記 (130)

はじめに

日本社会臨床学会編集委員会

年が改まり、2010年代に入ったところで、17巻3号をお届けする。先号で予告されていたように、まず昨年の5月31日に奈良女子大で行われた第17回総会のシンポジウムⅡの記録「『優生学から新優生学へ』を検証する~日米を行き交いながら」を掲載する。このシンポジウムⅡでは、最初に「アメリカの優生思想」を深く研究されている秋葉聰さんから、「アメリカからの報告~アメリカの優生思想の伝統と現在」という題で、アメリカの優生思想の具体的展開と現状を、歴史的視点を踏まえて報告いただいた。その後のパネルディスカッションでは、竹内章郎さん、福本英子さん、山下恒男さんが、秋葉さんの話を受けて、それぞれの自論を展開された。ここでは、優生思想の多様な展開、例えば功利主義的優生思想とユートピア的優生思想、さらに人口政策や少子化対策まで射程に入れた活発な議論がなされ、優生思想をめぐる問題の根深さが浮き彫りになっている。
論文は4本ある。篠原論文「『障害児・者問題試論』36年」は、昨年、和光大学を退職した著者の最後の公開授業の原稿である。「障害」学生などとの立場を超えた忌憚のない交流を通して、理論化を試みてきた経緯が綴られている。桐原論文「『「差別禁止法」ということへの疑問』への意見」は、古賀論文(17巻1号)に対する、法理論の立場からの反論である。この論考をきっかけに、さらに多様な論議が呼び起こされることを期待したい。佐藤論文「児童虐待対応における質向上のための一提案」は、児童相談所に勤務された経験を踏まえて、児童虐待問題の対応について、具体的な方法論を提案している。原田論文「『脳』・『意識』・『自己』を考える」は、生命進化の最先端としての脳のあり方に着目して、精神薬理学などの脳還元主義をどう乗り越えるかが模索されている。
岡村達雄さんが2008年7月8日に逝去された。本文は、2009年1月10日に東京の専修大学で行われた「岡村達雄さんを偲ぶ会」の記録である。例えば、「多様性」と「共同性」、「平等」と「共生」といった概念をめぐって、常に新鮮な論議を巻き起こし続けた岡村さん…その岡村さんが提起されたことは、時を共有した人たちの中に、そのまま生きていて、あたかも岡村さんが同席されているような雰囲気で話し合いが行われている。改めて岡村さんの影響力の深さを確認した思いである。岡村さんのご冥福を衷心よりお祈りしたい。
「シリーズ社会臨床の視界」(全4巻)に対しては、本誌に沢山の方から書評をいただいた(16巻2号)。中でも山内論文は、全4巻を読み通して詳細な分析を試みている(17巻1号)。今回は著者がそれに応える企画で、8名の方からご寄稿いただいた。書評に正面から対峙して、自論を述べられている方、書評に深く絡みながら、さらに思考を掘り下げられた方、シリーズ本の中では論じ切れなかったことを補足されている方、書評に真っ向から反論されている方…それぞれの方に自由に自論を展開していただいたので、とても読み応えのある企画になったと思っている。
〈ここの場所から〉に掲載した「観念と現実の間(2)」(佐藤剛)は、労基法も守られない児童養護施設の過酷な実態と、それでもできるかぎり子どもに寄り添おうとする職員の葛藤が描かれている。
申し遅れたが、18回総会は、2010年5月8日~9日、明星大学(東京都日野市)で行われる。多くの方々の参加を期待している。