社会臨床雑誌第19巻第2号

社会臨床雑誌第19巻第2号
2011年12月18日

はじめに 日本社会臨床学会編集委員会 1

【日本社会臨床学会第19回総会報告(2011年5月14〜15日 於東京都足立区・帝京科学大学】
シンポジウムⅠ 「発達障害」概念を問い直す〜教育・精神医療の変化の中で〜
 話題提供1 学校現場から「発達障害」を考える 岡崎勝 3
 話題提供2 精神科医療における「統合失調症」診断の拡大と負のスパイラル 広瀬隆士 7
 話題提供3 医療の中の「発達障害」を考える 戸恒香苗 19
 討論  24
記念講演
「教育」ではない まず「仕事」だ 山田潤 38
日本社会臨床学会第Ⅸ期総括(2009年4月〜2011年3月)・日本社会臨床学会第Ⅸ期第2年度会計報告
 日本社会臨床学会第Ⅸ期運営委員会 57

〈論文〉
スリーマイル島原発事故をふりかえりながら原水爆と原発の廃絶を考える 秋葉聰 63
変革の志操—『相互扶助論』(クロポトキン)の照射する行く手—【その4】 飯島勤 81
ベーシック・インカム論の「労働と所得の分離」論について 竹内章郎 98

〈映画や本で考える〉
「失われた地理感覚」と救済の不可能性 吉田直哉 113

〈ここの場所から〉
〈まか不思議な世界 Ⅹ〉〜学会改革時の原点に戻り、今を考える〜 赤松晶子 116
観念と現実の間(7)—児童養護施設立ち上げ格闘記— 佐藤剛 124

編集後記  127
投稿のお願い  128

はじめに

日本社会臨床学会編集委員会

本学会の第19回総会は、去る5月14〜15日、飯島勤を実行委員長として、東京の帝京科学大学で開催された。今号は、その報告のうち、シンポジウムIと記念講演の記録を掲載する。
シンポジウムⅠは「『発達障害』概念を問う〜教育・精神医療の変化の中で〜」というテーマで行われた。小学校教師の岡崎勝は、「発達障害」などという概念に囚われず、どんな子どもも受け入れて付き合っていくしかないというしなやかなスタンスを語り、広瀬隆士は、たくさんの人が了解不能な「統合失調症」とされ、絶望的な薬漬け状態に陥っている現状を打開する方途として「発達障害」概念を使用することを提唱している。また戸恒香苗は、抽象的な観念に流れずに、日常的な当たり前の関わりを大切にするという長い経験に基づいて、「発達障害」概念を批判している。
記念講演は、山田潤氏の「『教育』ではない まず『仕事』だ」である。若者の雇用が深刻な状況にある現在、我々のやるべきことは、産業構造の変化に合わせて「職業訓練教育」を充実させることなどではなく、今こそ「雇用」から仕事を切り離し、本当に人を生かす「仕事」とは何かを真剣に考えるべきだ、と力強く主張している。この講演は、次号に掲載するシンポジウムIIの記録とも関連しているので、併せてお読みいただけるとありがたい。
論文は3本ある。秋葉聰の論文は、スリーマイル島原発事故に光をあてることで、福島第一原発事故の問題点も浮かび上がらせている。また原発問題を通して、独自の反優生思想が語られている。飯島勤の連載論文は、今回が最終回である。「自立することは、人と人が繋がること、助け合うことだ」というテーゼを基調に、日常のそれぞれの現場をラディカルに変革していこうという志操が力強く語られている。竹内章郎は、ベーシック・インカムの理論が依拠している「労働と所得の分離論」をマルクス主義経済学の立場から精密に批判している
〈映画や本で考える〉のコーナーでは、吉田直哉が、天童荒太の『包帯クラブ』を読み、受傷体験を羨望視するような隘路の中にいる現在の若者の定住感覚の喪失を論じている。
〈ここの場所から〉の赤松晶子は、自身の精神医療との関わりを深い反省をもって見直し、さらに現在の状況を批判的に警告している。佐藤剛は、登校しない児童養護施設の子どもたちをめぐる自身の見解と他の職員との確執を描いている。
今号は編集し終わってみると、今までにない膨大なページ数になってしまった。これまでの雑誌のスタイル、次号とのバランスを考え、思い切ってシンポジウムⅡの記録と今号に掲載の予定であったいくつかの論文を次号に回すことにさせていただいた。ご執筆いただいた方と読者には申し訳ないと思っているが、次号をできるだけ速やかに発行できるようにしたいと考えているので、ご容赦いただきたい。