『カウンセリング・幻想と現実』 上巻「理論と社会」/下巻「生活と臨床」

カウンセリング・幻想と現実〈上巻〉理論と社会
カウンセリング・幻想と現実〈下巻〉生活と臨床
日本社会臨床学会(編)
現代書館(2000/01/20発行)
各巻 3000円

「本書を編むにあたって」より

「一九九〇年代に入って、カウンセリングがいわゆる大衆化現象をみせている。この現象を前にして、カウンセリングの思想と技法に疑問と批判を提起し、そこから現代社会を考えようとする立場から、本書は編まれた。
本書が作成された背景には、ほぼ三十年にわたる前史が存在している。一九六九年に日本臨床心理学会において開始された臨床心理士資格認定を問う動きの延長上に、本書が位置しているからである。
臨床心理学を主に構成している心理テストや心理治療・カウンセリングという技法は何のためのものであり、資格は誰のためのものなのかという根源的な課題を、私達社会臨床学会に集う者達は、かつての臨床心理学会からひきついでいる。一九九一年に臨床心理学会は、厚生省の意図する臨床心理士の国家資格づくりに協力すべきか否かをめぐって二つの立場に分かれ、「心の専門家」の資格づくりに反対する考えに立つ者達が、国家資格づくりへの協力の姿勢を選択した臨床心理学会から分かれて、日本社会臨床学会を設立した。一九九三年のことである。・・・・・・
社会臨床学会を発足させた後も、カウンセリングをめぐる学習会や学会誌への論文掲載は重ねられていた。一九九五~九六年にかけて学会が刊行した単行本四冊より成る「社会臨床シリーズ」(影書房)の第二巻は『学校カウンセリングと心理テストを問う』であり、他の巻にも、心理治療・カウンセリングに関わるいくつかの論考が収められている。一九九四年秋からほぼ一年をかけて、私達は「『カウンセリングと現代社会』を考える」と名づけた月一回の連続学習会を持った。とりわけ九〇年代に入って顕著になったカウンセリングの大衆化現象を、批判的に押さえておきたいという思いからである。それらの取り組みが、今回本書を編むにあたっての土台になっている。
しかし、十四年前に論じた「心理治療」が主に医療構造とのからみでとらえられたのに対し、カウンセリングは近年、生活のあらゆる領域にあふれ出しており、「する側」「される側」という図式では非常にとらえにくいものとなっていることに気づく。支配と被支配の構図が確実に存在しながら、それが見えにくくなっているのである。管理構造が「洗練」され、個人の内部にも内在化されている。したがって、カウンセリングという管理が外側に存在していると感じにくくなっている。カウンセリング批判が世の中に届きにくいゆえんであろう。しかしそれだからこそ今、この管理の仕組みを見極めてゆくことが重要である。・・・・・・・」

上巻・目次

本書を編むにあたって
第I部 カウンセリングの歴史と理論
第1章 カウンセリングの歴史と原理(小沢牧子・和光大学非常勤講師)
第2章 戦後日本におけるロジャーズ理論---学校教育を中心に(林延哉・茨城大学教育学部講師)
第3章 戦後精神医療とカウンセリング---個人史の視座から(赤松晶子・東京足立病院(臨床心理))
第II部 現代社会論とカウンセリング
第4章 生涯学習・管理社会におけるカウンセリング(中島浩籌・YMCA高等学院、河合塾COSMO講師)
第5章 消費社会の神話としてのカウンセリング(井上芳保・札幌学院大学社会情報学部教員)
第6章 感情労働とカウンセリング(石川准・静岡県立大学国際関係学部教授)
第7章 資格社会とカウンセリング(佐々木賢・専門学校時間講師)
あとがきにかえて

下巻・目次

本書を編むにあたって
第I部 医療・管理とカウンセリング
第1章 病院精神医療とカウンセリング(三輪寿二・東京足立病院勤務)
第2章 地域精神医療とカウンセリング(広瀬隆士・三吉クリニック相談室勤務)
第3章 職場のメンタルヘルス対策とカウンセリング(武田利邦・神奈川県立商工高等学校教員)
第4章 阪神淡路大震災/PTSD/心のケア(大野光彦・皇学館大学社会福祉学部教員)
第II部 子ども・若者・学校とカウンセリング
第5章 児童相談現場とカウンセリング(三浦高史・兵庫県中央こどもセンター判定指導課長)
第6章 学校現場とカウンセリング(渡部千代美・公立中学校養護教員)
第7章 相談室という現場とカウンセリング(島根三枝子・相談員(高等学校))
第8章 臨床的営為とカウンセリング---個人史の視座から(加藤彰彦・横浜市立大学教授)
第III部 解放・自立論とカウンセリング
第9章 女性とフェミニストカウンセリング(佐藤みどり・公立中学校養護教員)
第10章 ピア・カウンセリングを考える(篠原睦治・和光大学人間関係学部勤務)
あとがきにかえて