社会臨床雑誌17巻1号

はじめに(日本社会臨床学会編集委員会)(1)

〈秋の合宿学習会2008報告(2008年11月29日 於マホロバ・マインズ三浦別館)〉
今、学校現場の分業化・チーム化をどう考えるか(名谷和子、三輪寿二、討論)(3)

〈論文〉
伝統的な優生思想と今日の優生思想(秋葉聰)(25)
見世物にされた人たち
—フリークス・野蛮人から人種標本へ—(山下恒男)(34)
メタボ検診・健康不安意識・新自由主義(下)(井上芳保)(48)
「差別禁止法」ということへの疑問(古賀典夫)(59)
企業社会と心理学(小沢牧子)(63)
〈家庭科の不思議(そのII)〉日本のほとんどの少女は主婦になる(梶原公子)(71)
『社会臨床の視界』読解の試み—社会臨床学からの思想形成—(山内裕史)(85)

〈【特集】日本社会臨床学会第16回総会記録を読む〉
〈生—権力〉と〈帝国〉的閉塞感の中で(高田明典)(116)
「健康不安」と喫煙をめぐって(伊藤茂樹)(121)
「健康」問題でも「貧困」問題を論じなくてはならない(山野良一)(124)
時間と空間から隔たってしまうと(佐藤礼次)(126)
福祉を魅力的に語る思想の言葉の不足(薄井明)(130)
「善/悪」を解き「好き/嫌い」へ(下河辺明子)(132)
自分の立っている視点で、健康・福祉・教育・国家・公共性を語りたい(榎本達彦)(134)

〈映画や本で考える〉
現実の教育政策を問いつつ変革の展望を探る立場から(嶺井正也)(140)
映画『今夜、列車は走る。』を見ながら考えたこと(川英友)(143)
立ち止まって、じっくり「セックス」を問い直す?(沢田圭)(149)
芹沢俊介『「いじめ」が終わるとき』からいじめを考える(山内裕史)(153)

〈ここの場所から〉
カンボジアの農村で教育について考えたこと(阿木幸男)(156)

『社会臨床雑誌』・『社会臨床ニュース』への投稿のお願い(161)
日本社会臨床学会第17回総会のお知らせ(表紙裏)
編集後記(160)

はじめに

日本社会臨床学会編集委員会

第17回総会が、今春5月末に、浜田寿美男さんに実行委員長をお願いして奈良女子大で開かれる。本号は、その一ヶ月前には発行したいと願っていたが、おかげさまで、そのことが実現できそうである。
本号冒頭では、2008秋の合宿学習会報告「今、学校現場の分業化・チーム化を考える」を掲載した。特別支援教育とスクール・カウンセリングの現状と問題の報告から始まっているが、議論は多岐にわたっている。原内理恵さんの「学校の中の『直接の関係』を守る」(本誌前号)も重ねて、お読みください。
第17回総会では、ひとつには「優生学から新優生学へ」を検証するが、秋葉聰さんが「アメリカからの報告」をする。秋葉さんの「伝統的な優生思想と今日の優生思想」は、そこに関わるイントロダクション的エッセイである。山下恒男さんは、「フリークス・野蛮人から人種標本へ」到る「見世物にされた人たち」を論じているが、この流れは非西欧世界の人びとを社会進化論的観点から階梯的に位置づけようとする知の営みになっていることを明らかにしている。井上芳保さんの「メタボ検診・健康不安意識・新自由主義」は、前号に続けて二回目である。今回は、新自由主義下の「健康不安」の仕組みを解明しながら「健康への意志」を再考することを提言している。古賀典夫さんは、「『差別禁止法』ということへの疑問」を述べている。ここでは、当該法制定の動きは、ADAや国連障害者権利条約に触発されて活発化しているが、はたして、これは「障害者」の生活をよくしていくことになるのかと問うている。小沢牧子さんは、「企業社会と心理学」を論じている。心理学は広告や労務管理に役立っているが、今回、特に後者との関係で、傾聴や共感そして自己実現などに着目して、自律型人材育成の問題を考えている。梶原公子さんは、連載〈家庭科の不思議(そのⅡ)〉で「日本のほとんどの少女は主婦になる」を書いたが、今回は、戦後における教育の民主化のなかで新設された「家庭科」が、今日まで性別役割分業に立った「主婦の養成」ということになっていなかったかと分析している。山内裕史さんは、本学会編「社会臨床の視界(全4巻)」全体を読みこなして、トータルな読解を試みている。その副タイトルは「社会臨床学からの思想形成」だが、本シリーズは「社会臨床学」の一端なのかどうかなど、幾つもの問いを発している。
高田明典さん、伊藤茂樹さん、山野良一さん、佐藤礼次さん、薄井明さん、下河辺明子さん、榎本達彦さんには、本誌16巻3号に掲載した「学会第16回総会記録を読む」ことをしていただいた。本誌上では初めて執筆していただく方が多く、新鮮な顔ぶれになったことを感謝したい。着目いただいたテーマもいろいろで、刺激的・示唆的である。読者の皆さんには、この方々の感想・意見への応答や「総会記録のもうひとつの読み方」などをお届けくださると幸いである。
〈映画や本で考える〉欄では、嶺井正也さんが、現実の教育政策を問いつつ変革の展望を探る立場から、公教育研究会編『教育をひらく』を読んでいる。川英友さんが、映画『今夜、列車は走る』を見ながら、「組織化されない」「無秩序」「非理性的」な運動などを考えている。前号で、中村英之さんが井上芳保編著『セックスという迷路』を論じたが、本号では、澤田圭さんが同書に向き合って「セックス」を問い直している。山内裕史さんは、芹沢俊介『「いじめ」が終わるとき』でいじめを考えている。
〈ここの場所から〉欄では、阿木幸男さんが、長年、カンボジアの農村に出入りして、教育・福祉に関わる支援活動をつづけてきたが、その報告をしている(2009/04/03)