総会実行委員長からお誘い

私たちは何を引き受けていこうとしているのか、“じっくり”立ち止まって考えたいですね。
日本社会臨床学会第13回総会実行委員長 戸恒香苗

総会へのお誘い

今年の総会シンポジウムのテーマに「新しい障害概念の浸透」と、「暮らしの中に浸透する医療」の問題を立てました。お互い内容が重なる所もありますが、たっぷり討論できると思います。今私たちの生活の中にこんなことどもの浸透を許していく隙というか、それに頼ってしまう脆弱さ、または不安があるのかもしれません。

新しい「障害」概念があっという間にひろがり、「発達障害者支援法」もあっという間に成立してしまいました。福祉、教育、医療の場がこの概念を必要とする背景、またそれによる変化を、それぞれの場から語っていただき、実際その「障害名」を負っていく子供、人達は、日常どんなことを負っていかなければらないのか、誰にとって、何故必要なのか等々を解き明かせればと思います。心理カウンセリングが問題を個人に戻していくのと同じように、医療も問題を個人化していくものです。

友人との日常会話で、「今、鬱なのよね」「片付けられない自分はAD/HDかもしれない」と、病名を交えて語っていることがあります。10年前、20年前にこんな会話はしていませんでした。それだけ病名が自分達の有り様と身近につながって来ているのでしょうか。

相談室に来た学生が、「自分は季節性鬱病だと思う」とか、「分裂病質人格ではないか」と自らを診断してきました。症状の項目を見ていくと、遠からず当たっているのです。就職が決まった今すっかり興味がなくなったようで、一言も触れなくなりましたが、これらの診断は症状のチェックで決まるのですから、誰もが思い込めば思い込む程あてはまっていくものだと思います。また、この診断が成り立てば、社会に今出られない理由として周りを納得させることができます。いや、自分を納得させるためかも知れません。自らが受け入れていくしかないところまで追い込まれているのでしょうが、受け入れさせられていることに気付くこともありません。

「新しい障害概念」としてでてきたAD/HD、LD、アスペルガー症候群にしても、何人も親子に会って来ましたが、診断されることに疑問を持っている親御さんに滅多に会ったことがありません。

最近、テレビで精神科医師が「不登校の子供たちの中にうつ病の子どもがいること、そして薬の服用」について解説していました。今や子供の「うつ病」は常識なのでしょうか。また、医師が「自閉症」や「アスペルガー症候群」と診断した子供たちの状態にどこがそうなのかと首をかしげたりすることが多々あります。今や診断の基準も随分変わって来たのか、ちょっとでもその傾向があれば、早期発見、早期治療にのせようとしているのでしょうか。私たちはその立場に立たされた時、その診断にのってしまう楽さをそう簡単に否定できない事態を迎えています。専門家、教師、親の目が一致しつつあるのを感じます。是非考え合いたいことです。

今年は4月早々、JR駒込駅近くの滝野川で会館を借りて総会を開くことになりました。

昨年の華やかな池袋にあった立教大学と異なりますが、会場のはす向いには旧古河庭園があり、低層の家並が続く落ち着いた町です。楽しみにお出かけ下さい。

About Us | Contact Us | ©2005 日本社会臨床学会